KIBIT 導入事例
トヨタテクニカル
ディベロップメント株式会社
無効資料調査の工数削減に高い効果を発揮 人工知能の活用で3~10倍の効率化を実感
知的財産(IP)事業と計測制御事業の領域でトヨタ自動車およびトヨタグループの開発力の基盤を担い、競争力強化を支援しているトヨタテクニカルディベロップメント株式会社(以下、TTDC)。特許に関する調査、解析、権利化支援などを行う知的財産(IP)事業において、特許調査はその基盤となる重要なプロセスにあたります。
しかし、国内外で年間に200万件以上もの特許が出願され、年々増え続ける膨大な特許情報から、調査目的にあった特許文献をスピーディーかつ的確に抽出することは、従来のやり方のままでは難しさを増しています。そこでTTDCは人工知能「KIBIT」を用いた特許調査・分析システム「Patent Explorer」をFRONTEOと共同開発し、AIを活用したまったく新しい手法によるスピーディーで質の高い特許調査・解析を実現しました。
ーお話を伺った方ー
トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
IPコンサルティング事業部 部長 川越 健司 氏
情報解析室 室長 高橋 君仁 氏
グループリーダー 森田 陽介 氏倉田 裕二 氏

トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
- 設立
- 2006年4月1日
- 従業員数
- 944名(2016年4月1日現在)
- 事業内容
- 知的財産(IP)事業、計測制御事業
特許調査のスピードと精度の向上を目指しAIの活用検討に着手
知的財産のプロフェッショナル集団として、トヨタ自動車およびトヨタグループの知的財産戦略を支えるTTDCは、特許の調査・技術動向解析、国内外の出願・権利化支援、自動車技術に関する翻訳・通訳を中心としたビジネスを展開しています。なかでも特許の調査・解析を担当するIPコンサルティング事業部は、最新の調査・解析技術を駆使し、お客様に質の高いサービスを提供しています。

IPコンサルティング事業部 部長 川越 健司 氏
TTDCに寄せられる調査・解析依頼は、自動車や自動車部品の開発初期における技術動向や他社動向調査、製品企画・設計時の出願前調査、試作・評価・量産時の競合特許調査、無効資料調査など多岐にわたります。IPコンサルティング事業部 部長の川越健司氏は「近年は、IoT(Internet of Things)、 自動運転、電気自動車、HEMS(Home Energy Management System)などの新しい技術が台頭しており、従来の自動車分野だけでなく広い分野の技術調査・解析が求められています」と語ります。同社にとって、ますます増えるこうした調査・解析をいかに正確に、かつスピーディーに行うかが課題となっていたそうです。

IPコンサルティング事業部 情報解析室
グループリーダー 森田 陽介 氏
IPコンサルティング事業部 情報解析室 グループリーダーの森田陽介氏は次のように語ります。
「毎年、国内で約30万件、国内外で200万件を超える特許が出願されています。通常、目的の特許文献を見つけ出す際には、これらを特許分類やキーワード検索で数百件から数千件まで絞り込み、人の目で確認します。しかし従来の方法では、無駄な情報(ノイズ)の確認が多く、漏れが発生することもあります」
そこでTTDCは、FRONTEOが開発した特許訴訟のディスカバリ(電子証拠開示)支援システムに搭載されている、同社独自のAI「KIBIT」を活用した関連文書抽出技術に着目し、特許調査に活かすことを協議。フィジビリティスタディを経て、AIによる特許調査・分析システムを共同開発することを決定しました。
特許調査のプロフェッショナルによる知見とAIのコラボレーションによる
特許調査・分析システムを開発
TTDCとFRONTEOによる共同開発は2014年12月にスタートし、2015年10月の特許調査・分析システム「Patent Explorer」の製品化によって実を結びました。共同開発における作業では、特許調査・分析のノウハウを持つTTDCが、過去の調査をサンプルとした実証実験を繰り返し、FRONTEOのAI「KIBIT」の精度を確認しながら、特許文献の関連度を算出するスコアリング機能を最適化しました。ユーザーインターフェースはTTDCの特許調査手順上のニーズに沿って改善を図り、完成度を高めていきました。

IPコンサルティング事業部 情報解析室 倉田 裕二 氏
Patent Explorerの操作性について、IPコンサルティング事業部 情報解析室の倉田裕二氏は「Patent Explorerはバージョンアップを重ねるごとに使いやすくなっています。スコアを得るまでの流れがとてもシンプルで、高い精度の結果がスピーディーに得られるため、より多くの調査をこなせるようになりました」と語ります。
数多く寄せられる特許調査依頼を、従来は各部門のサーチャーが検索式で絞り込み、検索結果の全ての特許明細書を読み込んでいました。今では1人の専任オペレータがPatent Explorerによりサーチャーの検索結果全ての特許文献をスコアリングし、算出された関連性スコアの結果をフィードバックするフローを確立。スコアの高い特許文献を優先してサーチャーが読み込むことで効率的に業務を進めています。
スコアの高いものから調査することで無効資料調査の効率が飛躍的に向上

運用イメージ図
TTDCでは先行技術調査やクリアランス調査などにおいて、Patent Explorerの利用効果は検証できていますが、現時点で特に有用性が高いのは無効資料調査だといいます。「Patent Explorerを活用して全体の20%を見て目的の文献が見つかれば、80%は調査不要となることは大きなメリット」(森田氏)だとその効果を語ります。
また、Patent Explorerは、特許明細書の段落ごとにスコアを算出しているため、明細書の中でどの部分に関連性が高いのかも示唆してくれます。特許明細書は数十ページに及ぶこともあり、従来の手法では該当箇所を見つけるのにも大きな負荷と時間がかかっていました。「例えば、30ページの特許明細書の中に該当する記載が10ページ目にあった場合、その10ページ目に辿りつくまでには多くの時間がかかってしまいます。Patent Explorerは関連性の高い段落を提示してくれるため、まずはその段落をチェックすることで、多くの労力と時間を削減できるようになります」(森田氏)

IPコンサルティング事業部 情報解析室
室長 高橋 君仁 氏
IPコンサルティング事業部 情報解析室 室長の高橋君仁氏も「検証段階ですが、感覚的には3倍~10倍までスピードが上がると思われます」と特許調査の工数削減効果を見込んでいます。
TTDCではPatent Explorerによって付けられたスコアの上位30%をまずは調査し、その結果をお客様と共有したうえで、調査継続の要否を判断するサービスを提供しています。「数千件を対象にした調査でも、上位30%どころか、数%程度で該当する文献が摘出されることも多くあります」と森田氏は効果を強調します。
従来の特許調査システムとは異なるPatent Explorerの独自性とメリット
森田氏はPatent Explorerを「他に類を見ないシステム。既存の特許調査システムや特許調査の“やり方”に対してどう活用し、調査の効率を向上させていくかがポイントだと考えています」とその独自性を表現します。TTDCでは複数の特許調査システムを利用していますが、Patent Explorerはそれらと取って替わるものではなく、併用することで効果が期待できるシステムと位置づけられています。
特許調査においては、スピードを重視するために検索で調査対象を絞ると調査漏れが出てしまうし、逆に調査対象を広めにとると時間がかかってしまうと
いう、スピードと精度がトレードオフの関係になってしまいがちです。森田氏はPatent Explorerを用いることでこうした状況を改善できるとして次のように述べます。
「特許調査に不慣れな方(例えば開発担当者)にとっては、検索キーワードなどで調査対象を極端に絞り込むより、検索範囲を絞り込まずにPatent Explorerで関連性の高い特許を従来と同じ件数だけ見るほうが精度が高くなるケースは多いと思います。また、検索式作成に要する時間も削減できるため特許調査も楽になります」。
つまり、急いで結果を求められるお客様にも精度の高い調査結果を提供することができるのです。
さらに、高橋氏は「私たちの本来の業務はコンサルティングです。AIによって必要な情報の収集を補い、調査・解析にかかる業務負荷を軽減できれば、こ
れまで以上に分析やコンサルティングに注力することができます」とより付加価値の高い業務にシフトできるメリットを述べます。
AI活用の技術とノウハウを蓄積しお客様に最高のサービスを提供
TTDCは本稿で紹介した無効資料調査だけでなく、技術・製品開発をおこなう上で欠かすことのできないクリアランス調査でもPatent Explorerを導入
したワークフローの構築を進めており、特許調査全般においてPatent Explorerのさらなる活用を検討しています。
川越氏は「特許の出願件数が伸びていく中で、今後はAIの活用は欠かせないものになるでしょう。そのためにもまずは効率的かつ精度の高い調査・解析ができるよう、着実に技術とノウハウを蓄積し、お客様に最高のサービスを提供していきたいと思います」と展望を語ります。
知的財産(IP)事業を専業で行う組織として、世界最大規模の人員を擁するTTDC。同社は知的財産の領域でこれまでに蓄積された膨大な知見やノウハウをベースに、先駆的なAI活用を推進することで、世界に冠たるトヨタ自動車とトヨタグループの技術の未来を支える磐石の体制を着々と整えています。
※本文中に記載されている会社名及び商品名は、各社の商標または登録商標です。
※記載内容は、2016年9月時点のものです。
その他事例
三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
1日最大4万件を超える通話データに対して
AIによる全量一次スクリーニングを実現
自然言語AI「KIBIT」と音声テキスト化システムの連携で
革新的なモニタリングシステムを構築
詳しく見る
株式会社かんぽ生命保険
自然言語AI KIBITを搭載した「Knowledge Probe」で革新的な分析システムを構築
読むべき「お客さまの声」を70~80%削減し、スピーディーなリスク発見が可能に
詳しく見る
株式会社グロービス
コンサルタントの暗黙知を組織の形式知に
~課題解決・提案力の向上を支えるナレッジ共有・活用基盤を強化。~
詳しく見る
東京海上日動火災保険株式会社
お客様本位の業務運営の実現に向け、お客様の声分析にAIを導入
すべてのデータから「見るべきもの」を抽出し、人の目で確認する運用へ
詳しく見る