特許調査とは
特許調査と聞くと特許を新しく申請する前に先行する特許を調べるというイメージですが、それ以外にも特許調査が行われる場面があります。何のために調査が必要となるか、その目的や実用新案など他の知財との違いなど、基本的な情報を紹介します。
特許調査とは
特許調査とは、特許に関するさまざまな情報を調べることをいいます。なお、特許を出願し登録手続きを行うのは主に弁理士の業務となります。特許調査は、メーカーなど企業の研究開発部門や知財部門、大学の研究室や研究所で行われるほか、特許事務所で専門的に実施することもあります。企業の知財担当者だけでなく、開発者や研究者といった立場で特許を調べることも珍しくありません。
特許調査の目的
特許調査の目的の一つ目は、公開済みの特許情報から、研究や事業に活かせる情報を得ることです。また二つ目の目的として、公開済みの特許に、自社の事業の障害や妨げになる特許がないかを調べることもあります。
特許、実用新案、意匠、商標の違い
特許のほかに、実用新案、意匠、商標も知的財産権の一種ですが、それぞれ異なるためここで整理しましょう。
- 特許: 新しい技術や製品、方法などの発明的な成果を保護する権利を指します
- 実用新案: 機械など物の形状や構造の考案で、特許より発明の保護レベルは低くなります
- 意匠: 工業製品や手品、建築物などの外観を指します
- 商標: 商品やサービスの商号、名称、ロゴなど、他社と区別するために使用するネーミングやマークなどです
特許調査の種類
特許調査の種類は調査の目的や調査の対象によっていくつかに分かれますが、代表的なものに技術動向調査、先行技術調査(公知例調査)、侵害防止調査、無効資料調査があります。
技術動向調査
関連分野の最新の技術動向や、競合他社がどんな研究開発に注力しているかなどを調査します。
先行技術調査(公知例調査)
自社の開発内容を特許として出願すべきか、同じようなアイデアが先に出願・登録されていないかを調査します。
侵害防止調査
自社の事業やこれから特許を申請する内容が、他社の特許を侵害する可能性がないかを調査します。
無効資料調査
他社から特許侵害の警告を受けた場合などに、対象の特許を無効化するための資料を調査します。
特許調査、特許分析の方法
特許調査はデータベースを参照する方法がメインの手法ですが、他にもいくつかの方法があります。
特許調査の代表的な方法:データベース検索や調査会社依頼
- 特許情報プラットフォーム:独立行政法人が運営する特許情報のデータベースが利用できます
- 民間事業者のデータベース:民間の特許情報事業者が提供するデータベースで専門的な検索を行う事もできます
- 公報の閲覧:特許公報などから直接調べる方法です
- 調査会社へ依頼:特許事務所や、特許調査を提供する事業者に特許情報を収集してもらう方法です
特許調査の主流はデータベース検索
デジタル化が進む前の特許調査は、公報をはじめとする文献の冊子を、ページをめくって一つひとつ調べるしかありませんでした。現在では、特許調査とはデータベースからいかに効率よく必要な情報を得るかが非常に重要です。とくに近年はAIを活用して高度な検索を行う取り組みも進んでいます。
特許調査・特許分析の現状と課題
多様化する特許情報の利用や情報入手の手段の増加、国内市場の縮小や拠点の国外移転など、特許調査を取り巻く環境は大きく変化しています。この変化に十分対処していくことが、これからの知財戦略に求められてきます。
データベースを用いた特許調査の実際
特許調査では、特定のテキストを含む特許をデータベースで検索するために「検索式」を作成します。検索式は、AND、OR、カッコなどの演算子を使用して複数の検索条件を組み合わせて作ります。さらに、特定の単語や分類番号など、条件指定のために記号やコードも使用し、必要な特許文献が出るように、検索条件を変えて試しながら絞り込みます。検索式を正確に組み立てることで、効率的かつ正確な特許調査が可能となります。
特許調査を取り巻く環境が大きく変化
特許調査を取り巻く環境は、次に挙げるように大きく変化してきています。
- 世界の特許出願件数の増加と技術の高度化、複雑化
- 環太平洋経済連携協定(TPP)による特許の保護期間の改正
- 多様化する特許情報の利用や情報入手の手段の増加
企業で重要度が増す知財戦略
知財戦略とは、企業や団体がもつ知的財産を有効に活用し、ビジネスや技術の成果を最大限に引き出すための戦略です。これからの知財戦略では、自社の開発・発明の権利を取得して活用することで、競争優位を確立したり、事業の拡大や新規事業の創出、技術開発などにつなげたりする取り組みが欠かせません。
AIを特許調査・特許分析に活用するメリット
特許調査が企業の知財戦略において重要である現在、特許調査に人工知能(AI)がどのように活用され、どのようなメリットがあるかをご紹介します。
AIが特許調査・特許分析に役立つ理由
AIの分析能力を活用すれば、特許調査員の個人のスキルや経験頼みで文献を見出すやり方よりも高い精度で、かつバラつきも軽減しながら、必要な特許データを検索し抽出することができます。
AIを特許調査・特許分析に活用するメリット
AIを活用することで、従来の人手による特許調査・分析に比べ、効率性が飛躍的に向上します。AIは膨大な量の特許データを高速かつ正確に処理し、傾向や関連性を発見できます。また、AIが重要なものから優先順位付けをしてくれることで、担当者は大量の特許文献を効率的に把握することができます。これにより、より深い分析ができ、より戦略的な知財活用ができます。
AI活用で解決できる特許調査の課題
特許調査のあらゆる課題にAIを活用できます。特許調査における代表的な課題としては、人的リソースや検索精度、検索スキルが挙げられます。
工数が膨大にかかり、十分な調査を行えない
特許情報が膨大となった昨今、必要な工数も増加しています。またその膨大さに対して、限られた調査員では必要な調査時間をかけられず、調査範囲が制限されてしまう恐れがあります。
関連性の低い情報が溢れ、正確な情報収集が困難
特許情報の豊富さゆえに、検索語句や検索方法の選択によっては、関連性の低い情報が多数ヒットしてしまい、正確な情報収集が困難になる可能性があります。
検索スキルやコツが属人的になり、結果にばらつき
特許調査で情報収集を行うためには、検索する情報の特性を把握した高度な検索式が必要です。正確で迅速な情報収集にはスキルやコツを要するため、属人的になりがちです。
FRONTEOのAIによる特許調査ツール・ソリューション
FRONTEOの自社開発AI「KIBIT」を用いた特許調査ソリューションで、先行技術調査や無効資料調査など、サーチャーや研究・開発担当の方々による特許調査や分析業務を効率化。調査対象の特許文書に対して関連性の高い文書をAIが判断し、優先順位の高い順番に表示します。
大幅なスピードアップと工数の削減
膨大な特許文章の中から関連性の高い文書を自動的かつ高速で処理し、検索できます。そのため分析業務のスピードアップが期待でき、限られたリソースの中で業務を大幅に効率化します。
検索精度の向上と文書の優先度付け
AIは高度な自然言語処理技術を利用して、より正確な検索結果を出すことができます。関連性の高い文書と段落を判断して調査の優先順位をつけてくれるため、人が見なくても良い文章を選別し、省力化することが可能です。
検索スキルによらないデータ抽出
特許調査で見つけ出したい文書を「必要な」教師データとして、必要ないデータを「不要」なデータとしてAIに学習させます。高度な検索スキルや検索式の知識を持った専門家が不在でも、高い正確性で結果を得られるようになります。