ナレッジの活用を企業が進める理由
ナレッジ(knowledge)とは、直訳すると「知識」「情報」を意味します。企業に蓄積した技術や技能にまつわるナレッジを活用し、引き継いで共有できれば、企業の持続と発展につながります。また、業務の効率化や改善点を発見でき、新商品・サービス開発で競争力の向上も期待できます。
蓄積された情報や技術・技能を伝承する
企業にとって重要な技術やノウハウを持っている人材が退職や異動をすると、その知識が企業内で失われるという問題があります。ナレッジの活用を推し進めることで、企業内に蓄積された知識や情報を体系的に管理し、後継者に引き継いだり、共有することができます。
業務を効率化し、改善点を見つける
顧客や社員から蓄積された情報やノウハウもナレッジの一つです。これらを活用することで業務の効率化や改善点の発見ができます。業務プロセスの改善や問題解決を迅速に行うことができ、生産性の向上やコスト削減につながります。また、新しい商品やサービスの開発にもつながり、企業の競争力を高められます。
ナレッジとノウハウの違い、ナレッジマネジメントとは
ナレッジと似た使われ方をする言葉に、ノウハウがあります。また最近、企業においてナレッジマネジメントへの関心も高まっています。それぞれの意味合いを確認しておきましょう。
ナレッジとノウハウの違い
ナレッジとは有益な知識・情報全体やそれらを活用する能力を指し、ノウハウは実践的な知識や技術のことを指すことが一般的です。ナレッジは企業や組織で役に立つ知識や情報、ノウハウは経験を通して得られるタイプの知識・技術といえるでしょう。
ビジネスにおけるナレッジの意味
ビジネスにおいてナレッジとは、従業員が持つ経験や技術、情報などを含めた、企業に蓄積された知的財産を指すといえるでしょう。企業内で共有し、活用することで生産性の向上やコスト削減につながります。
ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントは、直訳すると知識管理という意味で、企業に蓄積したナレッジを効果的に管理し、活用することを指します。ナレッジ共有のプロセス、暗黙知から形式知への流れを表すSECIモデルでは、Socialization(共同化)、Externalization(表出化)、Combination(連結化)、Internalization(内面化)の4つのフェーズでナレッジの活用を考えます。ナレッジの共有や蓄積を推進することで、情報共有や人材育成が進み、企業の生産性や競争力を向上させられます。
手順をまとめるマニュアル化もナレッジマネジメントの一つ
マニュアル化は、情報共有のための一般的で有効な方法の一つです。業務の手順や作業方法をまとめて従業員間で共有することで、業務の効率化や品質管理を行うもので、ナレッジマネジメントの一環といえます。
ナレッジ活用で解決できる企業の課題
近年、企業に求められる働き方改革や業務推進において重要なのは、社内における情報共有の効率化です。専門性が高いエキスパート人材には、日々社内から問い合わせが寄せられ、その対応の積み重ねが本来業務の時間を圧迫しています。また、業務推進に必要な情報を探そうとしても、誰に聞くか、どこを探すかがわからず、情報にたどり着くまでに時間を費やしてしまうことも多いのではないでしょうか。
問い合わせ対応に工数がかかる
同じような問い合わせを何度も受けるような場合、対応に多大な時間や人的リソースが必要となります。ナレッジ活用ができれば、過去の問い合わせ事例やFAQなどの情報を蓄積し、自動化やAI技術を活用することで、問い合わせ対応の工数を削減でき、人的リソースの有効活用やコスト削減につながります。
社員のスキルアップ、早期育成
社員のスキルアップは、企業の重要な課題の一つです。ナレッジの活用、つまり社員が必要とする情報やノウハウを共有することが社員のスキル強化につながります。また、ナレッジの共有により、社員の知識やスキルが組織内で共有されることで、業務の効率化や生産性の向上にもつながります。
過去データを利活用できていない
企業に蓄積されたデータは貴重な資産です。蓄積した過去のデータを分析したり検索したりして活用すれば、より効率的な業務プロセスを作っていけるでしょう。また、過去のデータの利活用により、今後の業務においてもより正確な判断ができ、企業の意思決定において有効な情報となるはずです。
ナレッジ活用がうまくいかない理由
ナレッジが活用できれば企業のあらゆる課題の解決につながりますが、実際に進めるにはハードルもあります。よくある失敗の原因として、関係者の意識の不足や運用ルールの不足が挙げられます。
ナレッジ活用への意識不足や無理な取り組み推進
ナレッジ活用を重要視していない企業や、ナレッジ活用のための取り組みが停滞している企業もあります。また、ナレッジ活用のための継続的なトレーニングや教育が行われていない場合、従業員のスキルアップやナレッジ共有の促進につながらない場合があります。
ナレッジを共有するルールの運用不足
従業員がそれぞれ個人的に保持している知識や情報が、運用ルールから漏れて組織全体で共有されず、適切にアクセスできない状況も起こり得ます。つまり、誰かが知っていることを、他の人が知らないまま同じことを調べたり、それを知らずに業務を進めてしまったりという状況に陥ります。
ナレッジ活用を成功させる導入の手順
ナレッジ活用の導入を成功させるには、ステップを踏み、経営層のサポートや社内文化の醸成も意識しましょう。また、業種や業務に合わせた活用を検討することが大切です。
ナレッジ活用へのステップ
ナレッジ活用の導入には、現状の課題の洗い出し、目的や効果の明確化、システムの導入、社員の教育や意識改革、運用ルールの策定などが必要です。前半の、課題の洗い出しや目的の明確化はとくに重要です。
ナレッジ活用を成功させるポイント
ナレッジ活用を成功させるには、組織の方針や目標に沿った取り組み方はもちろん、経営層からのサポートや組織で情報共有を促す文化が醸成できていることも必要です。それに加え、運用ルールの明確化、システムの使いやすさや柔軟性の高さも挙げられます。いずれも、社員の協力を得ながらナレッジ活用を進めることが重要です。
ナレッジ活用の方法や事例
ナレッジ活用には、社内SNSやチャットツール、社内Wiki、FAQデータベース、オンライン研修、人材マッチングプラットフォームなど、さまざまな方法があります。事例としては、IT企業では技術情報の共有、製造業では生産ラインの改善、営業企業では顧客情報の共有など、業種や目的に合わせた活用が行われています。
企業のナレッジを共有・活用するツールとは
企業でのナレッジ共有・活用のためには、どのようなツールが必要なのでしょうか。有効なツールの種類、活用方法を説明していきます。
ナレッジ活用ツールの種類
企業内でナレッジを共有・活用するためのツールとして、社内wiki、社内SNS、文書管理システム、オンラインストレージがあります。社内wikiは全社員が情報やナレッジを書き込み、編集・検索・閲覧できるシステムです。社内SNSはビジネス用のSNSで、従業員同士が情報共有や意見交換ができます。文書管理システムは電子文書の一元管理や活用ができ、オンラインストレージはデータの保管や共有などができます。
SaaSツールで行うナレッジ共有
SaaSツールとはクラウド上で提供されるソフトウェアで、社内ナレッジの蓄積、共有、活用を支援する機能を備えたツールも多く提供されています。主な機能として、文書の共有・編集、タスク管理、プロジェクト管理やチャット機能などがあり、社内での情報共有やコミュニケーションを強化し、ビジネスの現場を改善する存在となっています。
AI(人工知能)で展開する今後のナレッジ活用
社内Wikiなどの既存ツールやSaaSツールを活用するだけでなく、近年ではAIをナレッジ活用に利用するという選択肢も出てきました。AIを活用すれば、これまで個人が行っていた情報や知識の集約や検索といったナレッジ活用を、はるかに効率化できる可能性があります。
AIが暗黙知を抽出し、形式知へ転換
AI技術を利用することで、企業が保有する従業員の暗黙知を形式知へ転換することが可能になります。暗黙知は口頭での伝達や実践によってのみ伝えられる知識であり、形式知として共有することが難しいため、失われがちです。AIを使用することで、従業員の言動や行動から暗黙知を抽出し、形式知としてデータベース化することができます。
AIは大量のデータの分類・選択・優先度づけが得意
AIを用いたナレッジ活用では、大量のデータを分類・選択・優先度づけすることが可能です。AIの自己学習機能により精度が向上するため、企業の意思決定や業務プロセスの改善に役立てることができます。AIによるナレッジ活用は、人的ミスを減らし、より迅速で正確な情報提供を実現することが期待されます。
FRONTEOのAIによるナレッジ活用ソリューション
FRONTEOのAIエンジン「KIBIT」の技術を活用することで、報告書・対応履歴などの膨大なデータや、ベテラン社員の知識・ノウハウを有効活用することが可能になります。
過去のデータやベテラン社員の知識・技術を有効活用
蓄積された報告書・対応履歴などの膨大な文書の中から、必要な情報を抽出。社内に埋もれたノウハウ・ナレッジの活用を促進することで、情報探索や問い合わせ対応業務の効率化や、組織全体の知識・スキルの向上を支援します。
回答を高精度かつ迅速に提示
報告書、議事録、提案書、問い合わせ対応履歴などのナレッジをQ&AデータとしてKIBITに取り込むだけで、細かな分類やタグ付けは不要。
知りたいことをを質問文として入力しKIBITで解析すると、取り込んだ膨大なデータを優先順位の高い順に並べ替えるため、「今、必要な情報」をスピーディーに見つけ出すことが可能です。
ナレッジの活用・技術伝承にAIエンジン「KIBIT」を活用した事例
AGC株式会社
AGC株式会社と株式会社FRONTEOが、自然言語解析AIエンジン「KIBIT」を活用したガラス製造AI Q&Aシステム「匠KIBIT」を共同開発し、AGCの国内ガラス製造拠点で運用を開始しました。匠KIBITは、熟練技術者の保有するガラス製造の知見をグループ内の技術者が簡単に引き出すことが可能で、自律的にデータベースを拡充できる仕組みを持っています。本システムはトライアルを行い、月間300件以上の利用があり、技能の共有と伝承に着実な成果を上げています。今後は、世界中のAGCのガラス製造拠点に展開する予定です。
参考事例
ナレッジの活用・技術伝承に役立つFRONTEOのツール
テキスト解析に特化し、少量の教師データでも高精度の解析が可能なAIエンジン「KIBIT」は、
ナレッジ活用/技術情報の伝承の課題を解決し、競争力向上を目指す企業や団体を支えます。