KIBIT 導入事例
株式会社横浜銀行
細かな解釈を必要とする複雑なテキストチェックを、KIBITで代替
1日1,000件作成される応接記録のコンプライアンスチェックを効率化
神奈川県において圧倒的なお客さま基盤をもつコンコルディア・フィナンシャルグループの株式会社横浜銀行は、多様な成長ステージの企業やお客さま一人ひとりに最もふさわしい金融サービスを提供し、地域に寄り添い信頼される銀行をめざしています。
2020年12月に創立100周年を迎える同行は、近年、デジタル技術を活用した銀行業務の生産性向上を積極的に推進。2019年4月には、部門を横断したDX推進プロジェクトを企画・牽引するデジタル戦略部が設立され、取り組みを加速させています。
その取り組みの中から、AIの活用事例となった「応接記録のコンプライアンスチェックの効率化」について、プロジェクトを推進する各部門の担当者に話を伺いました。
ーお話を伺った方ー
株式会社横浜銀行
デジタル戦略部 主任調査役 新川 直敬氏 、大田 博也氏
リスク管理部 コンプライアンス企画グループ 主任調査役 森 哲平氏
ICT推進部 調査役 塩原 斉氏

株式会社横浜銀行
- 設立
- 1920年12月16日(創立)
- 従業員数
- 4,559人(2020年3月31日現在)
- 事業内容
- 普通銀行業務(預金・貸出・為替・投資型商品の販売業務、金融商品仲介、相続関連業務、投資銀行業務 など多様化するニーズに対する幅広い金融商品・サービスの提供)
KIBIT導入の効果
・細かな解釈を必要とする複雑なテキストチェックをKIBITが代替、大幅に効率化
・経験やスキルに依存した「チェック品質」のバラつきを解消
・社内システムへのAPI連携で、リアルタイムチェックを実現
毎日1,000件にのぼる応接記録のチェック負荷軽減・標準化が課題
投資信託や保険など元本割れリスクのある金融商品の勧誘・販売にあたっては、コンプライアンスや顧客保護の観点から、どのような案内、説明をしたか等を記載した1,000〜2,000字の応接記録が作成されます。さらに、役職者はそれをしっかり読み込み、投資経験などに応じた十分な説明であるか、不十分な理解や誤った理解が疑われる発言はないか、注意すべき内容の発言はないかなど、様々な角度からのチェックを行っています。
デジタル戦略部 主任調査役の新川 直敬氏は、この応接記録のコンプライアンスチェック業務の課題を次のように話します。

デジタル戦略部 主任調査役 新川 直敬氏
「応接記録の作成やチェックは非常に重要なものですが、1日1,000件にのぼる記録の作成自体、従来の方法のままでは負荷が高いという状況にありました。また、店舗によっては役職者が1日10件以上の応接記録をチェックし、リスクの高い応接記録を発見、対応する必要があります。このチェックも大変負荷が高く、本来行うべきお客さまへのフォローや担当者への指導などの業務時間を圧迫していました。経験やスキルに依存した『チェック品質の差』もあり、水準の底上げも課題でした」(新川氏)
テキスト解析に特化したAI「KIBIT」で、PoCでは抽出効率15倍の結果も
応接記録のチェックのルール自体は明確に定められているものの、文章を記述する形式。担当者によって書き方が違い、読み手によっても基準のバラつきがあります。
「チェックのルールは明確に定められているものの、文章内容を細かく解釈しながら様々な角度で検証していく必要があり、1か0かで容易に判断できるものではありません。これを従来のルールベースのチェックで再現することは非常に難しく、言語解析のAIを活用する必要があると考えました。その選択肢のひとつとしてあげられたKIBITでPoCを実施しました」(新川氏)
PoCでは、「投資商品に対する顧客理解」「高齢者の家族同意」をはじめとする5つの観点を選択し、KIBITで応接記録からどの程度の精度・効率でリスク検知ができるかを検証しました。

観点により差はあったものの、ある観点においてはランダムレビューの15倍の効率で、抵触データの抽出が可能という結果が出ました。つまり、すべての文書をチェックしなくても、AIが付けたスコアの上位6~7%を見れば、目的とする文書を抽出できるということです。
「抽出効率が15倍という検証結果はインパクトがありましたし、文章の傾向をKIBITがつかんでいることもわかりました。辞書の作り込みを必要としないなどツールとしての使いやすさの他、少量のデータで学習できること、大規模なシステムが不要であること、しっかりとしたサポートが受けられることなど、多角的な判断でKIBITを採用することに決めました」(新川氏)
1件のリスクも見落とさない、高水準のモデル作りへ
その後は、数万件の応接記録の読みこみ、問題があるか、どの観点で問題があるのかのラベル付けを実施。そして、そのデータをKIBITに読み込みモデルを作る、という試行錯誤を1年ほど繰り返しました。
また、KIBITのモデル作りと並行して、応接記録簿の構造化も進められました。あるキーワードが観点AではNGであっても、観点BではOKという場合もあり、目的とは違うところでスコアに影響が出ることがあります。KIBITで目的のデータを解析するためには、データ構造上の問題を解決する必要がありました。また、応接記録簿の構造化によって、担当者の作成負荷を軽減し、役職者のチェックの際の視認性を向上させ、業務全体を効率化したいというねらいがありました。
「最終ゴールは、営業店の日々の業務の中で、役職者が担っているチェック機能の一部を代替するということです。業務負荷の軽減はもちろんですが、リスクとなる可能性を考えれば一件の見落としも許されない。相当に高い水準のものにしなければいけないというプレッシャーがあり、客観的な効果指標を模索していました」(新川氏)
「FinTech実証実験ハブ」で信頼性を客観的に確認
ちょうどその頃、新川氏は金融庁の「FinTech実証実験ハブ」への参加打診をFRONTEOから受けることになります。
「他の金融機関との共同実験により客観的、信頼性の高い指標が得られる、案件を前に進める大きなチャンスと考え、迷わず参加を決めました」(新川氏)
2018年5月に実施された金融庁のFinTech実証実験ハブでは、試行錯誤で作成していたモデルから1つを選び、「人のみのチェック(従来型)」「AI(KIBIT)を活用したチェック」で比較検証を行いました。

その結果は、「AI(KIBIT)を活用したチェックは人のみのチェックに比べ、単位時間あたりの正解(リスクの高い記録)発見件数が平均1.4倍、さらに、AIを併用することで新任担当者でもベテランと同等のスピードで正解を発見できた」というものでした。
「期待以上の成果でした。それまでは、行内での検証結果を信頼していいのか?という議論もありましたが、実証実験に参加した他の金融機関でも同様の結果が出ており、客観的で説得力のある材料が得られました」(新川氏)
※金融庁「FinTech実証実験ハブ」
Fintechを活用したイノベーションに向けたチャレンジを加速させる観点で金融庁が設置。フィンテック企業や金融機関等が、前例のない実証実験を行おうとする際に抱きがちな躊躇・懸念を払拭することを目的としている。
本番運用に最適なモデル・システムづくりを追求
FinTech実証実験ハブでの成果にも後押しされ、業務活用のための本運用の準備が本格的に開始しました。
まず1つめが、AIのモデル強化です。
ここまでの検討の中で、人と同等の基準でKIBITにチェックさせるためには、さらに数十のモデルが必要であることが見えていました。また、コンプライアンスチェックを行うAIのモデルを作ることは、すなわちコンプライアンスの基準を設定するということでもあります。
「検証段階では私がモデル作りを行っていましたが、最終的なモデルの確定段階はコンプライアンス全般を管理し、実際に不適切事案の検証や指導の実務を担うリスク管理部に入ってもらう必要があると判断しました」(新川氏)

リスク管理部 主任調査役 森 哲平氏
実務運用のためのモデル作成を担うのは、リスク管理部 コンプライアンス企画グループ 主任調査役の森 哲平氏です。
「応接記録簿の構造化において、リスクベース・アプローチを重視した記録方法への変更を行いました。お客さまの属性や取引内容のリスク度合いに応じて記録項目を変えるようにしたことで、相対的にリスクの低い取引は記録項目を削減することができました。
現在は、数万件の応接記録簿をあらためて確認しながら、教師モデルを作成しています。応接記録のAIチェックを2020年9月から部分的に開始することにより、営業店の業務効率化および役職者の承認基準の統一化を目指していきます」(森氏)
そしてもう1つが、CRMシステムとのリアルタイム連携です。
KIBIT – Connectを活用し、応接記録が含まれるCRMシステムにKIBITエンジンをAPI連携。応接記録をリアルタイムにチェックするシステムをパブリッククラウド上に構築し、今年1月にカットオーバーしました。

ICT推進部 調査役 塩原 斉氏
ICT推進部 調査役の塩原 斉氏にこの背景について聞きました。
「当行では、新たなシステムやツールを導入する際は、1つのユーザー部門の課題だけでなく、全体最適で考え、行内全体のDX推進に役立つように設計します。KIBITも、社内イントラから自由に、セキュアにアクセスできる環境を用意しています。様々なテーマでの解析の試行、活用促進を行いながら、最終的にはお客さまへの新しい価値提供につなげられるシステム作り・プロジェクト推進を目指しています」(塩原氏)
KIBITの活用を広げながら、さらなるDX推進へ
最後に、横浜銀行のDX推進を担うデジタル戦略部のお二人に、今後の展望を聞きました。

デジタル戦略部 戦略企画グループ 大田 博也氏
KIBIT活用推進を主に担うデジタル戦略部の大田 博也氏は、FRONTEOに対する期待をこう語ります。
「行内でのKIBIT活用案件の発掘・展開をさらに進めていくために、分析サポートやコンサルティングを通じたノウハウ提供に加え、DX推進に関するナレッジや他社事例の情報提供を期待しています」(大田氏)
「すでに、お客さまの声の分類・抽出や、営業報告書からのニーズ検知などをはじめとして、いくつかのテーマでKIBITの活用検討を進めています。FRONTEOには、KIBITの活用やテーマ拡大はもちろん、DX推進のよき相談相手として、新しい金融企業への転換に向けた変革にご協力いただきたいと考えています」(新川氏)
※本文中に記載されている会社名及び商品名は、各社の商標または登録商標です。
※記載内容は、2020年6月時点のものです。
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