KIBIT 導入事例
株式会社リタリコ

障害者向け就労支援で人工知能(AI)を活用したワークフローを導入
病状悪化につながる予兆を発見し、重篤化(じゅうとくか)を回避

発達に課題のある子ども向けのソーシャルスキル&学習教室の運営、障害のある方の「働く」をサポートする就労支援事業など、多様な人々の教育と社会生活支援を行う株式会社LITALICO。障害のある方の就労支援事業を推進するLITALICO ワークス事業は、障害者の就労ストレスなどにより病状が重篤化するケースを予防するため、人工知能「KIBIT(キビット)」によるビジネスデータ分析支援システム「KIBIT Knowledge Probe(以下、Knowledge Probe)」を導入しました。熟練スタッフの知見をシステムに取り込むことにより、病状悪化の予兆を早期発見。スタッフが早期のケアを行うことで、重篤化を回避しています。

ーお話を伺った方ー
株式会社LITALICO ライフネット支援室
 室長 浅見 淳 氏

 精神保健福祉士 江田 暁子 氏

株式会社リタリコ

https://litalico.co.jp/

設立
2005年12月26日
従業員数
1,270人
事業内容
学習塾及び幼児教室の運営事業、児童福祉法に基づく障害児支援事業、障害者総合支援法に基づく就労支援事業、インターネットメディア事業など

障害者の就労支援記録をレビューし、リスクを評価
精度のばらつきが課題に

ライフネット支援室 室長 浅見 淳 氏

LITALICO ワークスは、全国56 か所の拠点に400名のスタッフを置き、精神疾患のある3,000人を超える人々のメンタルケアを行いながら就労を支援しています。就労支援においては就職活動のみにとどまらず職場定着のためのサポートも行います。

「2018 年4 月の精神障害者雇用義務化に向けて、障害者の就職環境は整いつつある一方、就職活動における挫折体験の繰り返しや、就職後の人間関係のつまずきなどにより、ストレスを溜め、症状が悪化することがよくあります。そのため、就職したとしても離職率が高くなりがちです。そして、メンタル不調によって起こる最大のリスクが自殺です」とライフネット支援室室長の浅見氏は語ります。

同支援室では、こうした課題を踏まえ、ストレスで症状が悪化したり、退職に至る前に、その予兆を捉え、未然に防ぐ仕組みを2年前に構築しました。各拠点で全ての利用者に対し自殺につながるリスクを5段階で評価し、リスク2以上はライフネット支援室に報告する仕組みです。

「リスク2 以上の報告があった利用者の基礎情報や支援記録を確認し、危険度に応じた支援方針を検討する流れを取ってきました。つまり、各拠点の支援スタッフのリスク感知能力に左右される状況でした」(浅見氏)

本来、専門家にとっても利用者の微細なネガティブサインを発見することは容易なことではないなかで、経験値が高い熟練スタッフと新人スタッフでは、予兆発見の精度に大きな差が存在していました。

AI が熟練スタッフの知見を学習し、重篤化の予兆を検出
早期介入が可能に

より良いサポートを行うために、テクノロジーの力を借りてはどうかとAI活用の話が持ち上がりました。

実際の支援記録から作られた教師データをAIに学習させた後、約300件の支援記録のリスクレベルの仕分けをテストしました。メンタル不調が重篤化した人の過去のデータとその症状が継続的に安定している人のデータをランダムに混ぜ、「衝動性」と「うつ状態」の兆候を分析したところ、リスクレベルのハイスコア上位30% に、実際に重篤化した方のデータの大半がリストアップされる結果となりました。上位30%での再現率は、「うつ状態+衝動性」と「うつ状態」では100%、「衝動性」でも94%という高い数値が計測されました。

「素晴らしい検証結果でした。自由に書き込まれた文章の中で、熟練スタッフが感じとるようなわずかなニュアンスをしっかり察知し、スコア化していました。衝動性やうつ状態の兆候で言葉では説明できない症状の特徴、例えば、そわそわしている様子など、支援スタッフがひやっとするような症状を、AIが捉えていました」(浅見氏)

このテスト結果に手応えを実感したLITALICO ワークスは、検討開始からわずか4ヵ月後の2016年4月に本格運用を開始しました。

「AI導入により、症状が重篤化する前にライフネット支援室からアラートを上げ、各事業所での早期介入につながるケースが増えてきている、というのが 大きな成果です」(浅見氏)



ライフネット支援室 江田 暁子 氏

「Knowledge Probe がアラートを出した方に、支援スタッフが声がけをしたところ、ハイリスク評価の最高値5の深刻なリスクを抱えていたことがわかっ たケースがすでに複数件報告されています」(江田氏)

ハイリスクと評価されたものは、元となる支援記録データをライフネット支援室の担当者が再確認して最終的な判断をすることになります。「『KnowledgeProbe』で全ての支援記録をふるいにかけ、上位30%に絞り込むことで、予兆発見からサポートまで一定のクオリティでワークフローを実現することができました」と江田氏は語ります。

システムイメージ図

運用当初は「うつ状態」と「衝動性」の2 要素をスコア基準にしていましたが、後に「不安・焦燥」と「過緊張」の要素を加えることで、さらに予兆発見の精度を高めることができました。

支援スタッフのスキルアップやモチベーション向上の効果も

「導入時には、『人の仕事をAI に取られてしまうのではないか』と不安がるスタッフも一部にいたかもしれません。実際には、リスクを検知した後の最終的な介入は人にしかできないし、それが顧客にとっても価値となる部分です。リスク評価においてはうまくテクノロジーの力を使ってほしいとスタッフに伝えています。予想外だったことは、AI の判断基準を知見として学ぶことで、スタッフが予兆に気づく能力も向上しているということです。また、『AIよりも早くリスクに気付きたい』と言うスタッフもおり、モチベーションアップにも一役買っています」(浅見氏)

また、クラウドサービスという運用の手軽さもあり、今ではLITALICO ワークスの業務に欠かせない役割を担っています。

AI活用範囲を広げ業務効率化を推進し、事業の強化に貢献

今回の導入プロジェクトを総括して浅見氏は次のように語ります。
「費用対効果はとても高いものでした。およそ一人を雇用するコストですが、専門家を一人雇ったとしても、ここまでのことはできません。こなせる量もスピードも違います。そして、いついかなるときでも、ブレない判断を瞬時にしてもらえる安心感があります」

利用者に安定して就職活動をしてもらうことが可能になるため、就労率や定着率の向上が今後は数値化されて見えてくることが予測されます。また、今回の事例で、支援記録作成者によって表現の仕方に多様性があっても、十分に文脈を読み取れることが実証されました。今後は、就労支援のなかでも適職診断や企業とのマッチングなど多分野での活用も期待されています。

浅見氏は、「将来的には児童分野でのいじめや虐待の発見など、各種社会問題の解決への展開にも活用できる可能性があると考えています」と活用範囲拡大に意欲を示します。

Knowledge Probeによって、AIの社会貢献事業への有効性が証明されたいま、今後、同社の様々な事業でのさらなる展開が期待されます。



※本文中に記載されている会社名及び商品名は、各社の商標または登録商標です。
※記載内容は、2016年9月時点のものです。

 

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